かもめのスローフォックストロット
by Seikita
ダンスを始めてから、私はいつしか服も一緒に作りたいと思うようになりました。 私のバレエを習っている友達は絵を描(か)くのが好きで、 いつも練習の中で踊っていて感じたことを家に帰って絵に描きたくなると彼女は言います。 私は絵を描くことなんて無理(むり)です。このように描きたいと思って絵の具を取るのですが、 後で自分の描いた絵を見るとすごくがっかり. . . でも、私は先生といつも練習をしているプロセスの中で、 音楽を聞いて体を動かしながらこの音楽にはきっとこの色が似合うだろうな? っておもったり、このlineは何だか悲しく見えるな?このステップは、きっとダンスシューズが自己主張(じこしゅちょう)したくなるだろうな?なんて思ったりする瞬間が多くなりました。 このような日々の中で、だんだん私も服を作ってみたいという気持ちがとても強くなりました。 近くに住んでいる友達のお母様が、長年洋裁をやっていらして今は一人暮らしだから楽しくおしゃべりしながら製図(せいず)、裁断(さいだん)などを教えてもらおうと思ったのです。私の友達も”私の母は一人だからあなたが来てくれたら母もとても喜ぶよ!”ということで私の服を作ることは始まったのです。
ダンス服は動くためにつくらなければいけないので、とても難しいです。普通 の服のようにきちんとつくれば動けなくなるし、私は肌が弱いので、できるだけ肌にやさしい生地(きじ)を選ぶことを気にします。けれどもそれにこだわりすぎればどうしてもユニークさの範囲(はんい)が限られてしまいます。まず最初あれやこれや検討(けんとう)をした結果 (けっか) インドサリーで始めてみようとになりました。デザインを考え、製図をしていく段階で、この布は伸びない生地だから袖付けの部分が一番問題でした。最初の作品だから”ゆとりの部分”をどの位 設ければいいのかわからないので、次の作品で袖のついたデザインをつくることにしました。
ちょうどその頃ミックスドコンペでフォックストロットを 先生と踊ることになったので私は制作している服は”かもめ”のイメージを想像しました。 少し前にビートルという高速船で韓国の釜山へ行ったとき、海風(うみかぜ)に乗って気持ちよく飛ぶかもめ達。広い海に大きな波しぶき海にふりそそぐ春の暖かい太陽の光。私は、太陽の色を表現するために黄色を使い、かもめの翼(つばさ)は、白い長いスカーフ、海の波しぶきを裾(すそ)の白いふちどり、波にキラキラ光る光は、スパンコール、スカートの裏地(うらじ)は、ちょっと陽気なイメージとぴりっと辛いおいしい韓国の料理のとうがらしをイメージして作品を作りました。
ダンスの練習も日々山あり谷ありで難しいことの連続(れんぞく)でしたが、私の中でコンペとか成績という気持ちは始めから終わりまでなにも考えることなく練習は進んでいきました。昼間は仕事、少し合間を見つけて服を作り、夜はダンス練習の毎日がとても充実(じゅうじつ)していました。でもコンペ近くになればさすがに、ダンス練習と服つくりで疲労しましたが、とても楽しかったです。

フォックストロットのStepは、 フロアの端からフェザーステップというステップで、 一番中心に向かってステップするのですが、 自分で作った作品を着て踊ればなんだか、港に戯れる”かもめ”になった気分がしました。 海風に乗って気持ちよく飛ぶ気分みたいな。まだそんなにうまく踊れないけれど気分はこのような気分なのです(笑い) 海のかもめ達は途中、小さなつむじ風が吹いて、 大きく開いた翼の傾斜を反対方向にかえて旋回(せんかい)するのです。 ここの”翼(つばさ)の傾斜(けいしゃ)を反対方向(はんたいほうこう)にかえて旋回(せんかい)する”というのが、 私はフォックストロットの踊りの中で一番すてきだと感じるところです。
春の海の風というのは心地よいのだけれど、 とても気まぐれです。 この気まぐれな風の中をカモメ達は翼の角度をかえながら上手に飛んでいくのです。 音楽は トランペット、サックスのパートが追いかけっこしながら奏(かな)でます。 これが、港の風とカモメの雰囲気(ふんいき)そっくりにおもえます。 ちょっとお遊びで腕に付けた黄色のアームバンドは、サキソフォンのリガチャーの部分をイメージして作ってみました。
練習の時はいつも先生と笑いながら練習することが多く、 本番で踊るときも先生と踊るのは不思議(ふしぎ)と緊張(きんちょう)が和らぎます。たとえて表現すれば、お父さんと娘が踊るくらいに全然経験が違います。(笑い)けれども何となくfeelingがにているように感じます。男の先生、女の先生にはいつも感謝です。
Reverse Wave , Three Waveを踊るとき、 私の首に巻いた白い長いスカーフがふわーっとたなびきます。 傾斜(けいしゃ)がかわれば、首も進行方向もかわりそこをみれば、違うお客さん達の顔(景色)があり、 つむじ風に巻かれて回転すれば、 ドレスの裾が大きく広がり 違う色の布が主役になり、布も踊っているみたいでした。
トランペットがパートの旋律(せんりつ)に出てくれば靴が主役になったり、 木管楽器(もっかんがっき)のサキソフォンやクラリネットがパートの旋律に出てくればスカーフが主役になったりと、 踊りながらこんな瞬間がとっても楽しいです。 パーカッションがパートの中心に出てくれば、 足取(あしど)りも軽く、靴が思いっきり自己主張(じこしゅちょう)をはじめて、 すべてが楽しかったです。
他の皆はりっぱな競技会のドレスを着て男の先生はえんび服を着て踊りました。私は先生には迷惑をかけたかもしれません。でも、私は心のこもった手作りの衣装で、私を愛してくれたまわりの人達をこの服に表現したくてたまらない気持ちでいっぱいでした。
このコンペを通して、服作りを教えて下さった友達のお母様との心温まる日々を過ごしたこと、先生とちょっときびしく、そして笑いながら練習して過ごした日々、温かく応援してくれた友達、韓国の思い出をたくさん与えてくれた韓国の先生、本当にありがとうございました。